環境デザイン・アトリエ

横浜の建築家からのメッセージ。
日々感じた事を綴ります。

2015年11月15日日曜日

フランク・ゲーリーの展覧会

ゲーリー(*1)の展覧会を見てきた。
評判に違わず、面白かった。

興味深く感じたのは、映像で、ゲーリー事務所の建築の作り方を説明しているコーナー。

コンピューターを駆使して、建築材のパーツの隅々まで管理する事で、大幅にコストを抑えているとの事だった。
デザインを実現するためにコストと格闘するのは、僕ら設計者には付いてまわる課題だけど、なるほど、ここまで徹底管理すれば、可能なのか・・・・ふむふむ。。。
(しかし、スゴい)

ゲーリーの建設アイディアを見ていて、突然、ルネサンスのブルネレルキ(*2)が頭に浮かんだ。
ブルネレルキは、当時難しいと思われた建設課題を技術提案によって次々に解決していった人。

どちらも、デザインを支える建設システムまで翻って「デザイン」している。
画:hiromichi yasuda

*1・フランク.O.ゲーリー
現代アメリカを代表する建築家。代表作にビルバオグッゲンハイム美術館がある。現在21-21で展覧会が開かれている。

*2・フィリッポ・ブルネレスキ
ルネサンス期のイタリア建築家。主要作品のサンタ・マリーア・デル・フィオーレのクーポラは、当時難しいとされた仮枠なしの提案で作られた。


6 件のコメント:

  1. 先生、おはようございます。

    仙台にいる私はGAの特集を見ながら「行きたいなぁ」と悶々としている身です。
    それにしても、ゲーリーは建築家の中でもかなり特殊だと思いますが、「そこまで経費削減策をひねりだすなら、そもそもそのな形にこだわる必要がないのではないか」と、建築家は言われることが多いのでは、と推察します。

    そこで質問です。
    上のような状況では、建築家である先生は施主に対してどのようなアプローチをされますか?

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  2. こんにちは。
    僕の場合はケースバイケースですが・・・そうですね、設計者は、与件や予算、要望を聞いて設計を始めたら、それほど大きく予算を外す事はありません。いつもややオーバーはしますが、その際、コスト削減の優先順位を決めて、コスト削減の悪影響を最小にして、削減して行きますね。

    ゲーリーの話に戻りますが、彼が何故そこまでするか?と言われると、彼は「コスト削減」が「凡庸な建築」になることを、徹底して避けているからです。
    本人が、コピーされたような凡百の建築にとにかく我慢ならないのでしょうね。

    それとアイデアを持つ建築家は数多く居ますが、アイデアを実現するために彼のようにここまでする建築家は多くはありません。
    平たく言うと、実現するためにはコストコントロールは不可欠であるということを徹底しています。
    もう一つ言うと、従来のコンサルがするコスト削減ではなくて、デザイナーの立場でのコスト削減の手法を持っている事です。
    それが彼の強みであり、建築家として説得力があるところなんです。

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  3. 先生、おはようございます。

    もうひとつだけ質問させてください。
    先生がおっしゃるようなゲーリーの強みは、彼の事務所規模と構成員が多彩なこと、と関係あるでしょうか?

    それならば、それが日本にゲーリータイプがいない原因のように思えます。
    例えば、海外ではアトリエ系建築事務所でも数百人単位が珍しくないのに対し、日本で同規模といえば隈研吾氏(SANAA…も?)の事務所しか思い浮かびません。

    あと、構造家の佐藤淳先生の講演を聞いていたときに思ったことです。佐藤先生は構造家の観点からコストコントロールされたデザインを提案できる方と認識していますが、日本では構造家と建築家がすみ分けをしていて、それぞれが別々の事務所を構えることが普通のように思います。もし、佐藤先生のような方がたくさんいて、建築家とより近い関係性(同じ事務所を開くなど)ならばどうなのか。

    海外では、構造家と建築家の関係性はどうなっているのでしょうか?

    答えにくい質問かもしれませんが、よろしくお願いします。

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  4. まず前提として、僕はゲーリー事務所についてそんなに詳しくないので、事務所形態とかスタッフ構成とかは知りません。すみません。
    たぶん、質問の内容は、GAのゲーリー特集号とか、ゲーリーのインタビューとか読んだ方が良いと思いますよ。

    ただ、一つ言える事は、所長の方針というのはアトリエ事務所では特に重要で、自分のアイデアを実現するために何が重要か?を考える人、つまり事務所の航海図を描くのはやはりゲーリーです。その上で、アイデアを実現するために、どのような専門スタッフが必用で、事務所の体制をどうすれば良いか?というのはゲーリー自身の判断でしょう。
    友人から聞いた事があるのですが、確か九州だったか四国だったか、地方の小さな町工場に、いきなりゲーリー事務所から連絡が入ったそうで、その工場が持っている技術についての質問だったそうです。日本でも殆ど知られていないような町工場の存在をゲーリー事務所は知っていたそうで、それだけ、希有な技術に対して世界にアンテナを張り巡らせている、とのことでした。

    構造事務所は重要ですね。僕の付合いのある事務所は、コストコントロールについても的確です。そういう事務所は信頼出来ます。
    設備も含めて、そのようなメンバーと同じ事務所で出来たらそりゃ良いですが、
    何故アトリエ事務所でそれが出来ないか?というと、設備、構造は、だいたい意匠事務所の5倍ぐらいのプロジェクト量を抱えないと経営的に成り立たない、という構造的な問題画あります。
    正確にはわかりませんが、年間の受注量がある程度以上になったら、総合体制でできると思いますが。

    海外の事例はちょっと解りません。

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  5. 少しピントがずれた質問をしてしまったようで、申し訳ありません。
    それにもかかわらず、丁寧な回答をしていただけたことに、本当に感謝しています。

    私は先生の回答を読みながら、内藤廣先生がデザインからコストを算出する眼を養うようきつく指導していたこと、スティーブジョブズが北陸の小さな町工場に仕事を任せたことなどを思い出しました。

    脱線話をはじめて、先生の手をまた煩わしそうなので、このへんで失礼します。
    重ね重ねになりますが、丁寧な回答をありがとうございました。

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  6. ピントがズレてる事はないので、ご安心下さい。
    また、質問があれば、何でも聞いて下さい。今回のように答えられないこともありますが(笑)、出来る範囲でおこたえします。
    では。

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