環境デザイン・アトリエ

横浜の建築家からのメッセージ。
日々感じた事を綴ります。

2015年5月27日水曜日

東洋大学にシンポジウムを聞きに行く

教壇に立つと、本を読んで解ったつもりだったことも学生の前で話すとアタフタしてしまうことがある。
部分的に曖昧であったり、説明の順番を間違えて筋が通らなかったり。
つまり、「解った気になって」いただけである。
「本当に理解している」というのは、学生の前で解るように説明出来て初めて言えることで、そうでなければ教壇に立っても、まだ「専門家」とは言えない。

先日、東洋大学に、内田先生のレクチャーを聞きに行った。
テーマは「電柱」
電柱をよく見ると、細部においてとても丁寧な仕事・・にも関わらず、それが集積してくると、徐々にその統一感を失って煩雑な姿になっていくという話だったけれど、単に美醜の話に留まらず(それがテーマではあったけれど)、その煩雑に見える姿を通して、細部における日本人の几帳面な気質、全体はおいては継足しの都市構造、の鮮やかな説明になっていた。
電柱から見た、日本人論であり、都市論であった。

大学では「設計意匠」が御専門とのことだけど、もう押しも押されぬ「電柱専門家」である。
画:hiromichi yasuda

2015年5月24日日曜日

山中湖にある小さな住宅

知人が設計した、山中湖畔に完成した住宅を見て来た。
東京で設計事務所をやっていた彼は、山中湖近くの土地に自身が設計した家を建てた。

以前、彼に「何故、東京を引払って山中湖に?」
と、率直に疑問をぶつけたことがある。

彼の説明によると、奥さんがアトピーに悩まされて、東京での生活が大変になったそうだ。結婚当時、東京での生活を決めた彼は、それが少なからずアトピーの原因になっていた事を知って後悔していた。

彼は独学で調べるうちに温泉治療が良い事を知ったそうで、幾つか治療を続ける中で山中湖近くの温泉が彼女のアトピーには効果がある事を知った。
で、今回の敷地を見つけた、とのことだった。

住宅に入ると新築特有のニオイが無く、19世紀でも手に入る様な無垢の杉材、漆喰、等々の自然素材を使っていた。アトピーの原因になるような外的要因を無くすのがこの住宅では重要であったそうだ。

20坪程度と聞いて、家族3人では少し小さいかな?とも思ったけれど、丁寧にデザインされたその広さは、寄り添って生活するには悪くないスペースにも思われた。

住宅は本来、そこに住む人間の為にあり、その生活を少しでも豊かに、そして幸福にする為の器である、という当たり前の事を、彼の献身的な行為や設計から、身をもって知った。

水は井戸水。汚水は浄化槽浸透式。プロパンガスと新たに引いた電気、十数分歩かないと隣家が無い環境で、改めて彼の覚悟というか意志を感じて帰ってきた。
画:hiromichi yasuda

2015年5月18日月曜日

高校生にとっての黄金町

自分は将来、何をやりたいか?
確か、大学受験を控えて志望校を決める際に考え始めたと思うけど、今にして思うと、ずいぶん少ない情報のなかで考えていたような気がする。

今日、僕の事務所に、
「街づくりをやりたいので、話を聞かせて下さい」
と、女子高生がやってきた。

事務所は横浜の「黄金町」にあるけど、最近では全国的に知る人ぞ知る、「アートによるまちづくり」のサンプルになるような地域である。

高校生とはいえ、それなりに礼を尽くして来たからにはこちらも半端な答えじゃマズかろう・・・第一、彼女の将来を左右するかもしれないし・・・
というわけで、ここで街づくりを仕切ってるエリアマネイジメントのスタッフさんに助けてもらって、一緒に街を歩いた。
昔、「風俗街」だった街がアートの街に生まれ変わる経緯を説明しながら。

アート、行政、マネー、コミュニティとエゴ、人間の良心や欲望、街を巡りながら、情報の多さと、一筋縄ではいかない、例えるなら多元的な立体パズルを解くような状況の中で、黄金町の街づくりがある、と、改めてそんな事を感じた。

高校生の彼女はやや高揚した表情をしていたけれど、
何を見ていたのだろう。。。。


画:hiromichi yasuda







2015年5月15日金曜日

この季節には珍しい台風

先日、この時期には珍しい台風が来た。
来る来る、って騒がしかったわりに大した被害は無かったけど・・・・

それは丁度大学のキャンパスを歩いている時のことで、
時おり強い風が吹いて、体が持ってかれそうになる程だった。

ふと、風に向かって羽をビンビン羽ばたかせている、蜂が目に留った。
風上に向かって必死に前に進もうと・・・でも、ジリジリ後退していて・・・今にも泣きそうな形相で・・・(そんなふうに見えたんです)
何度押し戻されても、前へ、前へと進もうとする姿に、けなげというか、つい応援したくなった。
ハッチ、ガンバレ・・・

一進一退が続く中、ビュッ〜と強い風が来たと思ったら、あっという間に、視界から消えてしまった・・・・
あらま。

蜂の、努力が・・・
というか、ハッチ君に感情移入してしまった、僕の想いはどこへ持ってけばいいのか・・・・

これがホントの、泣きっ面に蜂。
画:hiromichi yasuda

2015年5月10日日曜日

老後について考える その1

普段は、自分の20年後30年後について想像する事などほとんど無いのだけれど・・・誰もが例外無く歳をとっていくのは、世の常というか、この世の法則というか・・・・
最近あったいくつかの経験から、老後について少し考えてしまった。

東京電機大学環境情報学部の授業で、専任の先生と一緒に住宅設計の課題をやっている。
今年初めて教える事になったのだけど、この課題がユニークな点は、「新築」ではなく「バリアフリー改修」であること。さらに、福祉系の専門家(先生)をお呼びして「福祉の現在」についてミニレクチャーを聴講した後、設計に取り組む事。

実際、僕も聴講したのだけれど、単に技術論だけでなく「人の幸福」についてより普遍的に考える内容だった。
つまり、思想にまで踏込めば、「バリアフリー」は設計を通して人の「自由」や「平等」について考えている、という事だろうか
何の為のバリアフリーか?・・・その動機付けとして学生にはとても効果があったと思う。

環境情報学部は、バリバリ建築専門学科、では無いけれど、だからこそ実験的にこのような試みができるのだろうか・・・・


画:hiromichi yasuda

2015年5月7日木曜日

静岡の田舎ぐらし

横浜から静岡の田舎に引っ越した友人夫婦の元に、遊びに行った。

JRの焼津駅から北に30分程車を走らせると、その新らしい生活の場があった

竹やぶとシイノキとその他諸々の山と、中腹を切り開いた茶畑と、麓の田んぼ。あと小川。
昔ながらの里山。
誰もが想像する田舎暮らし。

家にはまだ荷解きの終わらない荷物があって、引越はさぞや大変だったんだろうな・・と想像する間もなく、「それでもだいぶ片付いたのよ」との答え。
「よく決心したね」というと「みんなに言われる」、と。

引越の話を聞いたのは突然だったけれど、彼らにしてみれば数年前から計画していたとのこと。

多少不便だったり、一々新鮮だったり、ちょっと寂しかったり・・でも大きな解放感があったのが、僕にとっての「新しい生活」だったのを、思い出した。
画:hiromichi yasuda