環境デザイン・アトリエ

横浜の建築家からのメッセージ。
日々感じた事を綴ります。

2015年3月31日火曜日

よい出会い

完了検査を無事に終え、クライアントへの引渡が終わると、どっと気が抜けてしまった・・・

今回は(も)いろいろ大変ではあったけれど、現場の監督さんとは良い出会いがあった。
我が子のように建築を扱っている監督さんには、頭が下がる。

職人さんが皆帰り、だれもいなくなった現場で、独り、玄関をほうきで掃いていて、途中コンクリートのちょっとしたバリ(*1)を見つけると、丁寧にヘラでハツっ(*2)たりして、終わるとまたほうきで掃き始めて
・・・監督さんのそんな姿をこっそり見てると、建築に対する思いと、尊敬と、感謝で、とにかく頭が下がる

こういう人が居て、良い建物は出来る。

画:hiromichi yasuda

*1)ばり・・・材料を加工する際に発生する突起
*2)ハツル・・・のみの様なものでコンクリートを削る。

2015年3月28日土曜日

今年度が終わり、来年度がやってくる

幼稚園→小学校→中学校→高校→大学→職場、年度の切替え(3月から4月)にかけてダイナミックな生活の変化があって、それぞれの卒業や入学は強く記憶に残っている。

仕事を始めると徐々に年度を跨いだ変化が小さくなってしまって、近頃では花見の季節、ぐらいにしか感じてなかった。

今年は、いつになく年度の切替えが仰々しいというか、久しぶりに3月→4月の変化を感じている。
区切りよく、今までの仕事は3月一杯で納めて、4月から新しい仕事が始まるから

4月から変わる生活に、進学する時に感じた期待と好奇心を思い出して、今、ちょっと新鮮な気分である。
画:hiromichi yasuda


2015年3月24日火曜日

引渡前の最後の検査

例えば、大リーグに行く為には、契約前にメディカルチェックを受ける。
ちょっと物騒な例だと、兵隊さんになる前には健康診断を行う。
いずれにしろ、問題があると、大リーグとは契約出来ないし、兵隊さんは兵役を免れる。

建物も、引渡前に検査を行う。

問題なくお施主さんに引き渡せるかどうかチェックする為に、
一つの建物で、最低2・3回、検査に立ち会う。
(公共になると、4・5回、立ち会う事も。)

3月末に同時に3っつの建物を引き渡すから、先週今週は検査のハシゴ週間で、ほとんど毎日現場に行っている。

晴れて、検査が終了して健康体であることが確認されると、
もう、引渡である。
ホッとする間もなく、僕の元から離れて行く。

苦労をかけた子ほど可愛い・・・とは言うが、
ともに過ごした思い出を楽しむ間もなく・・
お別れの季節である。


画:hiromichi yasuda



2015年3月16日月曜日

事務所前で家具の塗装をしていると・・

先日、事務所で家具をつくることになり、僕は塗装を受け持った。

土曜日の穏やかな日に事務所前の川沿いで塗装を始めると、通りすがりの人から声をかけられる。

「そんなんじゃ、ダメよ。まず、砥の粉を塗らなきゃ!奇麗に仕上がらないよ」
と、訳知り顔のおっさんから、いきなり注意されたり、

「ちょっと見ててもいいですか?」と幼子を連れたお母さんが、10分程ジーッと見ていて、一つ塗終わると満足したように、「ありがとうございました」とお礼を言って帰っていく。

極めつけは、
「兄ちゃん、頑張ってるね。そうだよ、人生山あり谷あり、良い時もあれば悪い時もある。それが人生ってもんだ!」
何でもいいから、人生の先輩として、一言、言いたい人まで。

でも、いろんな人と話をして、悪い気はしなかった。
むしろ清々しいというか。

今の時代、日常から仕事場が隠れすぎている。
職場を見せるだけで、もっと簡単に解決する問題が沢山ある様な気がする。
画:hiromichi yasuda

2015年3月13日金曜日

年度末、完成に向けて。

年度末に向けて、3棟が同時に竣工する。
こんなことは、僕の事務所では未だかつて無かった。正直、ちょっと忙しい・・・・

多少景気が良くなっている・・とか、建築の需要が増えている・・とか、言われているけれど、それにしても? である。

現場をハシゴする中で、
足場が外れたら(おお!)とか、内観が仕上がったら、(へえ〜)とか・・・現場に行く度に姿を変える建築に、一喜一憂している日々である。

職人さんも、完成に向けた追い込みで、毎日多くの人が出たり入ったりしている。
現場は修羅場・・・もとい、完成を前にした最後の山場、である。
画:hiromichi yasuda

2015年3月6日金曜日

家具のデザイン・こぼれ話

先日、ある勉強会で聞いた、銘木店の専務(伊勢戸)さんの話が面白かった。
「木材の流通」をとおして、家具デザインの歴史を説明してくれた。

僕らは家具に限らずデザインの変遷について、特に近代は時代の好みや西洋化など「思想面」から理解する事に慣れている。
が・・・・

とりあえず、専務さんの話に戻ろう。
明治初期は、江戸からの延長で、針葉樹が多く使われていたという。
針葉樹とは、檜や杉など今でも最も多く使われている日本の伝統的な木材。
日本の広範囲に生息しているから、近場で調達出来る。

ところが、明治中期から大正にかけて鉄道網が広がるとともに、東北・北海道の木材が使われるようになる。
樹種で言えば広葉樹。特にナラ材の発見は大きかったようだ。
更に時代は下って、第二次大戦までは、ナラ、シナ、楓が使われるようになる。
植民地の樺太、満州、からの供給である。
戦後になると、ラワンなど東南アジアからの輸入が増えていく。

一般に針葉樹→広葉樹の流れは、日本の近代化(西洋化)とセットで考えられている。
(ま、そりゃそうだが・・・・)

専務さんの話は、流通から、つまりデザインの背景からの解明だった。

画:hiromichi yasuda




2015年3月2日月曜日

大学生の卒業設計

JIA主催で、神奈川県の7大学による卒業設計コンクールがあった。
通称「大卒コン」

各大学から優秀作品が集まり、全部で30強の作品が並ぶ。
JIAの事務方として「大卒コン」の運営を手伝うなかで、
ずいぶん貴重な体験をさせてもらった。

作品にでこぼこはあるけれど、
学生にとって、「卒業設計」がどれほど大きな存在か・・・・
改めて考えさせられた。

4年間の成果を、と言えばそれまでだけど、もうちょっとなんか自分の存在を賭けているようなところがある。
高校球児が、甲子園を目指して3年の夏をむかえるような感じに近いかも。
エネルギーが注ぎ込まれているもの程、清々しい。

彼らを見ていると、何かに夢中になることが無かったら、青年期がある事自体無意味ではないか、とすら思えてしまう。

審査員もそのかけられたエネルギーに答えるように、丁寧に真摯に批評していた。
久しぶりに良いもの見たな。


画:hiromichi yasuda