環境デザイン・アトリエ

横浜の建築家からのメッセージ。
日々感じた事を綴ります。

2015年11月29日日曜日

鴻池朋子さんの「根源的暴力」展の話

何とも刺激的な題名の展覧会だった。(*1)
恥ずかしながら、鴻池さんの作品も彼女自身も知らなかったのだけど、その作品には、ちょっと圧倒された。

いったい、これは何?
動物の皮をキャンパスに描いた獣の絵画、臓器のような不気味な彫刻の数々。
感情に強く作用するけど、モヤモヤとなかなか言葉にならない。
これだけの力作を前にして、なんとももどかしい。

多くの来館者がいて、その中に著名な批評家の東浩紀さんがいた。
(僕も、何冊か本を読んだ事がある)
一枚の絵を前に、小声で娘さんに説明をしていた。
家族連れのプライベートな鑑賞だったみたい。

そ〜っと近寄って聞き耳をたてたら、小学生にもわかるような言葉でとても解りやすい説明をしていた。
フムフム・・・・
東さんが次の作品に移動すると、気が付かれないように、僕もそ〜っと付いていった。。。

画:hiromichi yasuda

*1 

鴻池朋子展「根源的暴力」

場所:神奈川県民ホール
会期: 2015年10月24日(土)~2015年11月28日(土) 




2015年11月24日火曜日

日曜日の使い方

ここのところ、日曜日といえども出張とか先送りした仕事の為に事務所に行くとか、何かに追われてる感じだった。

久しぶりにこの前の日曜日は、ゆっくり過ごした。
お昼頃からモソモソと出かけて、本屋さんを複数まわって、新書や気になった本を数冊買って、最後にドトールに寄る。
散歩中決った電柱で止まる犬みたいに、立ち寄るのはだいたい同じ本屋。
締めのドトールでは、コーヒー飲みながら買ったばかりの本を読む。
気が付くと、外は暗くなっている。

とまあ、こんな日曜日が・・・至福の時間。
画:hiromichi yasuda

2015年11月19日木曜日

自転車自慢

犬を飼っている人のコミュニティというのがあって、よく散歩途中で飼い主同士が会話しているのを見かける。
何故か上品な犬の飼い主は誇らしげで、そうでもない犬の飼い主は恨めしそうで・・・

先日、自転車で高架橋のEVに乗った時、同じく自転車で乗り込んできたおじさんに、声をかけられた。

「いい自転車だね〜」
「速そ〜だね〜」
「後ろから見てたけど、エレガントだね〜」
・・・・・・」
「いい自転車だね〜」
3回ぐらい「いい自転車だね〜」って言っていた。

ママチャリの、おじさんだった。


画:hiromichi yasuda

2015年11月15日日曜日

フランク・ゲーリーの展覧会

ゲーリー(*1)の展覧会を見てきた。
評判に違わず、面白かった。

興味深く感じたのは、映像で、ゲーリー事務所の建築の作り方を説明しているコーナー。

コンピューターを駆使して、建築材のパーツの隅々まで管理する事で、大幅にコストを抑えているとの事だった。
デザインを実現するためにコストと格闘するのは、僕ら設計者には付いてまわる課題だけど、なるほど、ここまで徹底管理すれば、可能なのか・・・・ふむふむ。。。
(しかし、スゴい)

ゲーリーの建設アイディアを見ていて、突然、ルネサンスのブルネレルキ(*2)が頭に浮かんだ。
ブルネレルキは、当時難しいと思われた建設課題を技術提案によって次々に解決していった人。

どちらも、デザインを支える建設システムまで翻って「デザイン」している。
画:hiromichi yasuda

*1・フランク.O.ゲーリー
現代アメリカを代表する建築家。代表作にビルバオグッゲンハイム美術館がある。現在21-21で展覧会が開かれている。

*2・フィリッポ・ブルネレスキ
ルネサンス期のイタリア建築家。主要作品のサンタ・マリーア・デル・フィオーレのクーポラは、当時難しいとされた仮枠なしの提案で作られた。


2015年11月13日金曜日

相模原の住宅(野沢さんの家)

先日、野沢さんのお宅でホームパーティーがあるとの案内を頂いて、野沢邸を訪れた
野沢邸(相模原の住宅)は、予々、拝見したかった住宅である。

到着すると、野沢御夫妻が僕たちを迎えてくれた。

やや天井高を抑えたリビング、屋上庭園?につながる寝室、そこかしこに野沢さんの趣味の家具や小物がちりばめられたインテリアを見た後、ホームパーティーが始まった

楽しい時間は足早に過ぎ去るもので、帰途についた後、もうちょっと「建築」を見ておけば良かったと後悔して、かつて野沢邸が紹介されていた雑誌を引っ張りだしてみた。

その記事には、「暮らしをつくる土台となる家」という見出しで、野沢さんの奥さんのインタビューがあった。
読み始めると奥さんが語る野沢邸が面白くて、、、、お庭の話や、食事の話でいつまでたっても「建築」の話にならない。・・・・でも、とても素敵な話であった。

奥さんの「価値観」が率直に表れたお話で、食事や季節変化などの経験を大切にされて、丁寧に暮らすことが語られていた。
そう言えば、美味しいお食事で、僕らをもてなしてくれたのは奥さんだった。

訪れて「いいなあ」と感じる住宅には、例外無く人と空間と時間がつくる楽しい経験があるけれど、野沢邸の「楽しい経験」は、野沢夫妻の共同作業・・・だったのかもしれない。





2015年11月4日水曜日

Y-GSAのシンポジウム

今年度で、Y-GSA(横浜国立大学大学院/建築都市スクール)の北山 恒さんが退官されるのもあって、横浜のバンクアートでシンポジウムがあった。

北山さんは僕が大学の3年の時、横浜国大にやって来た。
直接教わっているので「先生」と呼ばなければいけない間柄だけど、北山さんはやはり「北山さん」がしっくりくる。
先生なんだけど、いつも兄貴目線で、話しかけて頂いた。
・・・・・上から目線なんだけど、いわゆる上から目線じゃない・・・・

卒業後、大学とちょっと疎遠になった頃、不思議と声をかけて頂いて、
「今度2年の設計、見てくれない?」
と言われたのは、30代の独立して間もない頃。
「図学ってのがあるんだけどさ。安田君見てくれない?・・・」
と言われたのは、昨年の事。

シンポジウムでは、大学改革や教育など多岐にわたって北山さんの功績が語られるなかでY-GSAの卒業生のその後の活動を常に気にかけていた、という話が印象的だった
なにより、僕自身がそれを感じている。

やはり北山さんは、Y-GSAの卒業生とって「兄貴」的存在である。
画:hiromichi yasuda